家づくりの基礎知識

鉄骨造の住宅とは?メリット・デメリットがわかる!

家を建てようと考えると、家の構造をどうしようか悩みますよね。
間取りなら失敗してもリフォームで直せますけど、構造は簡単には変えられません。

前回は木造の解説をしたので、今回は「鉄骨造」について解説していきます!

前回の木造の記事はこちら↓↓からご覧いただけます。


一般的に言われている木造住宅のメリット・デメリットを信じて建てると後悔してしまう可能性が高いです。
木造住宅を検討している方はぜひご覧ください

 

ひと昔前は「住宅=木造」でしたが、近頃は年々鉄骨造の割合が増えてきました。
大手ハウスメーカーでも鉄骨造を扱う会社が増えています。

展示場を見に行っても、営業マンは自社の都合のいいことしか教えてくれません。
なので、鉄骨造について勉強して、適切に判断できるように準備しておきましょう。

ポイント

この記事でわかること!

・鉄骨造とは?
・鉄骨造と木造は構造的に近い
・鉄骨住宅のメリット
・鉄骨住宅のデメリット
・鉄骨住宅を選ぶ一番のメリット!

 

 

鉄骨造とは

鉄骨造は「Steel」の頭文字を取り「S造」とも言われています。
を材料としている構造で、鋼の良いところと悪いところがよく出ています。

マンションや工場など大きな建物から車庫や倉庫などの小さな建物まで万能に使える便利な素材で、スカイツリーや東京タワーも鉄骨で建てられています。
一概には言えませんが、強度も耐久性も高く、自由な形に使える構造です。

 

鉄骨造は使われる鉄骨の厚みに応じて2種類に分けられます。
肉厚が6mm以上の鋼材を「重量鉄骨」6mm未満のものを「軽量鉄骨」といいます。

 

鉄骨造・木造・鉄筋コンクリート造を構造的に考えると、

「鉄骨造と木造」

「鉄筋コンクリート造」に分けることができます。

鉄骨造と木造は「柔構造」鉄筋コンクリート像は「剛構造」といいます。

 

イメージとしては

柔構造は「合気道家」のように地震や台風などの外部からの力を家が変形して柔軟に受け流す構造

剛構造は「プロレスラー」のようにガッチリ固まって地震が台風の力を真っ向から受け止めて防ぐ構造です。

 

そのため、素材としての違いはありますが、構造的に鉄骨造は木造に近い特徴を持っています。
住宅を建てるとき、鉄骨造と木造で迷うことが多いと思いますが、構造的には似ているので、素材の特徴を比べて考えてみるのもいいかもしれません。

 

特に住宅で用いられる軽量鉄骨は木造に近い構造です。
違いとしては鋼か木かという素材の違いなので、一長一短です。
それぞれのメリットデメリットを考慮しても決めきらなければ、あとは好みで選ぶのもありだと思います。

 

このあと、鉄骨造のメリットとデメリットを紹介していきますが、軽量鉄骨と比べて重量鉄骨の方が鉄骨造の恩恵が大きくなります。

例えば、鉄骨造は工場のような大空間をつくれる特徴があります。
重量鉄骨では柱と柱の間を十数メートル空けられるのに対して、軽量鉄骨は4〜6mほどと空けられる空間が小さくなります。

受ける恩恵は重量鉄骨の方が多くなりますが、その分、建物は重く価格も高くなります。

 

材料としての鉄骨の金額は一般的に「価格=重さ×単価」で決まります。
なので、重くなるほど建物の金額も高くなります。

さらに、建物が重くなるとそれだけ堅固な地盤が必要です。
場合によっては土地の地盤改良も考慮する必要が出てきます。

 

 

鉄骨造の建築工法

住宅などの軽量鉄骨に多く用いられる工法で、柱と梁をボルトで固定する「鉄骨軸組工法」(ブレース工法)、重量鉄骨に用いられる「鉄骨ラーメン工法」などがあります。

鉄骨造は多くの工法があるので、検討している会社の工法を確認してみてください。

 

 

鉄骨造のメリット

家の構造を検討している方は「鉄骨造だけ」を調べているというよりは「木造と鉄骨造どちらの方がいいのか」で悩まれている方が多いかと思います。
なので、ここで紹介するメリット・デメリットは「木造と比較してどうなのか」が多くなります。

鉄筋コンクリート造の住宅だけは剛構造で、一緒に比較してしまうとややこしくなってしまうので、またの機会に紹介させていただきます。

 

 

耐震性が高い

鉄骨造は木造と同じ柔構造です。
同じ柔構造で鋼と木を比べた場合、材料としては当然、鋼の方が強くなります。
ただし、軽量鉄骨の場合、鉄骨が薄いので木造と似たり寄ったりの耐震性になることもあります。

 

木造と違い、鉄骨造のメリットとして大きいことが「構造計算」です。

 

構造計算とはその建物の強さを計算で証明することです。
つまり、「構造計算をしている=その建物の強さが保証されている、強さの根拠が示されている」ということです。

そんな構造計算を鉄骨造のほとんどはやっているのに対して、木造住宅のほとんどはやっていません。

木造住宅の場合、「2階建てまでの住宅は一定のルールに従った設計をすれば簡易的な計算をすればよし」とされています。
そのルールに従った設計をすれば、「ある程度の強さは確保できているでしょう」という想定で建てています。
ルールに従って設計しても、場合によっては想定している強さの 2〜4割ほど少ない ときもあるそうです。

 

それに対して鉄骨造の場合はそれぞれの建物で構造計算しています。
建物の強さがきちんと保証されているので安心感が違いますよね。

ちなみに木造住宅でもオプションで構造計算を依頼することは可能です。
ですが、構造計算の費用で20〜30万円かかり、さらに強度を上げる必要が生じて設計の変更をするとプラスαで費用が発生します。

 

 

広い空間が作りやすい

先ほども例に出した通り、鉄骨造は広い空間を作ることができます。

建物は上の階や屋根の重さを「柱」で支えています。

その柱の間隔(スパン)を広くすることができます。
広いリビングダイニングキッチンを作れたり、大きな窓を設置したり、開放的な空間を作りたい方には嬉しいメリットです。

 

 

デザイン性の自由度が高い

「耐震性」のところでお話しした通り、鉄骨造は多くの場合、構造計算をしています。
木造住宅の場合は構造計算を簡略化するために一定のルールに従って設計しているため、デザインの自由度が低いです。

鉄骨造は極端な話、どんなデザインでも構造計算で強さを証明することができれば建てることができます
スカーツリーも構造計算が成り立っているので鉄骨造で建設することができました。

木造では家の形は四角形で、作れる部屋の広さも限られています。
鉄骨造の場合は色々なデザインに挑戦できます。

 

 

品質が安定している

鉄骨造の材料である鋼材は工場で生産されているので、品質が安定しています。

木材の場合、木は生き物なので同じ時期に、同じ場所で育てられた、同じ樹種だとしても強度やクセが異なります。

最近ではその木材を工場で集成材や合板として加工することで、品質を一定に保てるようになってきました。
ですが、いくら工場で加工しても元の材料の品質が一定ではないので限界はあります。

 

 

火災保険が安い

保険料の金額に関わる構造体の等級が鉄骨造は「T構造」になります。

火災保険料は構造級別のM構造(マンション構造)<T構造(耐火構造)<H構造(非耐火構造)で保険料が高くなります。

M構造はマンションなどの共同住宅の構造なので、一般住宅の中では、鉄骨造が区分されるT構造が一番保険料が安くなります。

木造住宅でもT構造にすることは可能ですが、「火災に強くする工法」で建てる必要があります。
その分、建築費も高くなってしまいます。

鉄骨造なら重量鉄骨でも軽量鉄骨でも無条件で「T構造」認定がもらえます。

 

火災保険は保険内容を手厚くするほど、保険料が高くなります。

比較的安価な補償内容で、H構造の場合、10年間で10万〜20万円くらいかかります。

これがT構造だと 半分 くらいに安くなります。
手厚い補償にすると、さらに保険料がかかるのでT構造で受ける恩恵は大きくなります。

 

 

シロアリの被害が少ない

鉄骨造と木造較したときの 一番のメリット とも言えるかもしれません。

木造の場合、シロアリ被害に遭うことは木の宿命でもあるので、仕方ないことです。

シロアリ被害に遭うことがわかっているから、昔に建てられた木造の神社仏閣などは改修がしやすい構造になっています。
だからこそ、今でも残り続けています。

今の木造住宅はコストを下げるために、わざわざシロアリに弱い輸入材を使用しています。

シロアリに弱い材料を補うために、シロアリを防ぐための防蟻剤を大量に散布します。

しかも、防蟻剤は人体にも影響があります。

 

注:ここからは私、個人の意見が多くなります。

 

防蟻剤は人体に影響がないものもあるそうです。

ですが、私の知っているシロアリ駆除業者は小さい赤ちゃんがいる家庭には薬剤散布をおこなっていません。
「小さい赤ちゃんは薬剤などに敏感だから、何かあるといけないから」だそうです。

「人体に影響がない」と言っている薬剤を散布するのに、防護服とメガネ、薬剤散布用のマスクをして作業します。

 

私が現場監督だったころはシロアリの相談を受けて、床下の点検に行く機会がありました。

床下に潜ると、マスクをしていてもその後は一日中しんどいくらい頭が重くなります。

 

木造の新築工事の場合、シロアリの薬剤は地面から1mの範囲に散布することが義務付けられています。

百歩譲って、大人は立って行動するし、椅子に座っているのでマシかもしれません。

 

では、小さい赤ちゃんはどうでしょうか?

薬剤が散布された範囲を這い回り、その中でお昼寝をしたり、遊んだり、多くの時間を過ごしています。

しかも、防蟻剤は揮発性があるため、5年〜10年に1回の散布が推奨されています。

 

矛盾が多すぎて意味わかりませんよね

人体に影響がないはずなのに完全防備で散布しないといけない。

小さい赤ちゃんは何かあるかもしれないのに、木造の新築を建てるときは必ず散布しないといけない。

やっと揮発して安全に暮らせるようになったら、シロアリ被害を受けないようにまた散布しないといけない。

そもそも、わざわざシロアリに弱い輸入材を使っている。

 

「何がしたいの?」って言いたくなります。

 

話が長くなってしまいましたが、鉄骨造ならこんなグレーな防蟻剤なんて使う必要がありません。

当然ですが、シロアリは鉄骨を食べられません。
床や外壁などで木材を使用したら、シロアリ被害に遭う可能性はゼロではありませんが、可能性は木造よりずっと少ないです。

少なくとも家の重要な骨組みは被害に遭いません。

 

 

鉄骨造のデメリット

 

建築費用が高くなる

木造と比べると、単純に材料が鋼材なので材料費が高くなります。

 

目安としては木造が坪単価40万〜60万円なのに対して、鉄骨造は50万〜80万円かかると言われています。

ザックリ計算で、50坪の家を建てたら1000万円くらい高くなることになります。

また、木造より建物の重量がありますので、土地の地盤改良が必要になる可能性もあります。

リフォームや修繕をするときにも高くなりやすいです。

 

 

固定資産税が下がりにくい

これはメリットとも言えますが、税金がかかるという面でデメリットとして紹介します。

 

固定資産税は土地や建物にかかる税金で、年に1回支払いがあります。
その土地や建物の資産価値が税金の金額に影響します。

土地はその時の地価が影響します。

 

建物の場合は経年劣化していくので、徐々に下がる傾向があります。

鉄骨造は木造と比べて、経年劣化が少ないと言われています。
良い言い方をすると劣化が少ないので資産価値が下がりにくいとされています。

悪く言い方をすると、資産価値が下がりにくいので、固定資産税も下がりにくく、税金を多く支払う必要があります。

 

 

断熱性が低い

木と鉄骨を単純に比べると、当然、鉄骨の方が熱が伝わりやすいので、断熱性が低くなります。
鉄骨の方が 約400倍 も熱が伝わりやすいと言われています。

構造体の断熱性は鉄骨造の方が低いのは確かです。

ただし、構造体(柱や梁の骨組み)は建物のほんの一部にすぎません。

構造体の断熱性よりも、
・壁の断熱材や遮熱材
・屋根の断熱材や遮熱材
・窓の断熱性や気密性

の方が家全体の断熱効果を高めるためには有効です。

 

 

サビによる劣化

木造には「シロアリ」という天敵がいましたが、鉄骨造にも「サビ」という天敵がいます。

 

鉄骨はサビが進行すると腐食して著しく強度が低下します。

 

老朽化の進んだアパートで崩れそうな鉄骨の階段や手すりなどを見たことがある方も多いかと思います。

日本の雨は酸性寄りなので、鉄骨の酸化を促進させてしまいます。
鉄骨は空気や水に触れると徐々にサビていきます。

直接雨水がかからないところに使用している鉄骨でも、空気中の湿気や結露の水分でサビてしまいます。
特に鉄骨は冬場に表面温度が下がり、結露が発生しやすいので注意が必要です。

鉄骨にはサビの発生を抑えるために防錆処理がされますが、完全に防げるわけではありません。

鉄骨の接合部には接合性を高めるために防錆剤を塗らない決まりになっています。
そのような防錆剤が塗っていない箇所や防錆処理後に傷ついて防錆剤が剥がれた箇所からサビが発生します。

また、海が近い地域では塩害により腐食しやすくなります。
防錆処理に加えて、塩害対策も必要になります。

 

 

遮音性や防音性は??

遮音性や防音性はそれほど高いわけではありません。

材料の比重が高く、密度が高いものほど遮音性・防音性は高くなります。
なので、鉄筋コンクリート造のように、石の塊みたいな外壁や屋根に囲まれている構造は遮音性が高くなります。
鉄骨も比重と密度は高いのですが、柱や梁といった骨組みにしか鉄骨を使わないので、防音性が高いとはいえません。
しかも、住宅に使われる軽量鉄骨だと木造と大差ありません。

 

鉄骨造や木造では
・外壁や天井裏の断熱材を防音性の高い材料を選んだり
窓の気密性を高めたり
ペアガラスやトリプルガラスの窓(ガラスが2、3枚の窓)を選んたり
ペアサッシの窓(窓が二重に設置されている窓)を設置
すると防音性を高める効果が期待できます。

ちなみに↑のことをすると、同時に断熱性も高めることができます。

 

 

まとめ 〜鉄骨造の一番の良さ〜

私としては、鉄骨造の一番のメリットは「シロアリ被害が少ないこと」だと思います。

シロアリは家の寿命に大きく関わります。

シロアリの被害が大きいと、木材を持ち上げようとするとボロボロ崩れてしまうほどになります。

構造体の部材はどれも強度的に重要な意味があります。
どこが被害を受けても構造のバランスが崩れてしまいます。
家が傾いたり、壁にヒビが入ったり、地震や台風などの大きな力で一気に被害が大きくなることもあります。

 

そして、シロアリを防ぐための防蟻剤は人体にも影響があると考えられています。
「人体には無害」と言われている薬剤もありますが、それでも危惧されているのはたしかです。
「無害だ」と言われている防蟻剤を散布している時に「安全ならマスクを外して作業してくれ」とお願いしても、業者は絶対にマスクをはずしません。

 

アレルギーがある方や薬剤、臭いに敏感な方は防蟻剤で体調が悪くなることもあります。
しかも、防蟻剤は一度の施工で済むものではなく、5〜10年周期で何度も散布しないといけません。
防蟻剤で体調に変化を感じた方は防蟻剤を施工するたびに悩まされることになります。

このように問題をたくさん抱えている「シロアリ」に悩まなくて済むことは鉄骨造の最大のメリットです。

 

ただし、デメリットとして 建築コストが高く なります

使っている材料が全く違うものなので致し方ないことでもあります。
また、鉄骨造は建物が重いので、軟弱な地盤に建てる場合は地盤改良をする必要があります。
建てる地盤との相談にもなりそうです。

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