住宅会社の間取り図ってイジワルだなぁ。
って思ったことないですか?
購入する家は立体物なのに平面的な図面で良いか悪いか判断を求められるんですよね。
建売のように現物を確認できる家ならいいですけど、注文住宅のように図面を元に家を建てる場合、その図面だけで決めないといけません。
そんなに大切な図面なのに素人の一般人に対して、ペラペラの平面図で話を進めていくんですよね。
「プロはそれでもわかるだろうけど、こっちはわからんわ!」
って言いたくなります。
最近は優秀なパソコンソフトが増えたので、図面を3Dにして見せてくれる会社も増えてきました。
ですが、住宅会社の営業マンが用意するものに対して、なんか疑ってしまうのは私だけでしょうか?
実際に営業マンが作る立体的なイラスト(パース)は見栄えが良くなるように作っていることもあります。
私が現役だった頃はどんな角度で描くと良い感じに見えるか考え、絵がきれいに見えるためのテクニックや描き方を駆使して描いていました。
あなたも経験ありませんか?
住宅会社との打ち合わせのとき、パソコンで2次元の図面を3Dに変えてくれたときに
「おぉ!」ってなんか良い感じに思ってしまったことありませんか?
これってその間取りが良かったんじゃなくて、2次元の図面が3Dになる技術に対しての感動なんですよね。
それなのになんかその間取りに対して好印象になって、いい感じに見えてしまっているだけなんです。
今まで平面の図面でイメージできなかったことが3次元になり目視できるようになったことで、不明だったものが解消されて良いものに見えているだけなんです。
でもこれはCADという建築で用いられるソフトを扱えれば誰にでもできることです。
しかも多少パソコンが操作できる人なら建築の知識がなくても図面が作成できるソフトもたくさんあります。
こんな小手先の技術に翻弄されてしまうから、しっかりと検討することができず、「なんか良さそう!」と流されてしまい、後悔する家づくりになってしまうのです。
そうならないためにも、自分で検証できる技術を身に付けることは非常に重要です。
自分で検証すれば、その間取りを盛ることもなく、フラットな目線で検証することができます。
そのような冷静で客観的に判断できる状態にすることが、失敗しない家づくりに大切なことです。
この記事を読んでわかること
- 自分で間取りをシュミレーションする大切さ
- 住宅会社のシュミレーションを信じてはいけない理由
- パソコンを使わなくても自分で平面図を立体的に変える方法
- 図面の中を歩けるようになる
この記事の目次
平面図を「自分で」3Dに描き変える
今回の記事ではこのような3Dの絵をパソコンを使わずに描けるようになってもらいます!
ちなみに、建築業界ではこのような遠近感のある状態のものを「パース」と言います。
なので、この記事でも以降は「パース」と言っていこうと思います。
このパースでは図面上の情報をほとんど描いたので難しそうに見えるかもしれませんが、ここまで描き込まなくても壁を立体的に描くだけでも一気に図面が理解できるようになります。
「自分でこれができるようになる」ということが非常に重要です。
自分が納得できる家を建てるためにも立体化できるようになりましょう。
難しそうに見えても結構簡単なので、ぜひやってみてください。
用意するもの
平面図(間取り図)のコピー
縮尺はどんなものでも大丈夫です。
図面は原本ではなく、必ず コピーを用意してください。
書き込んだ後に何か確認したい場所があっても、書き込みで見えなくなってしまうといけませんので。
また、コピーをするときに図面が確認できる範囲でなるべく線を薄くコピーしてください。
線を薄くした方が完成したパースが際立ってわかりやすくなります。
(ここでやり方を紹介するときの図面はわかりやすいように元の図面を濃く印刷しています。
もっともっと薄くてOKです。)
元の図面が小さい場合は拡大コピーをすると描きやすくなります。
見本の図面はA4用紙に拡大してコピーしています。
下書き用の鉛筆(シャープペン)
少し面倒ですが、下書きをきちんと描いておくと完成したパースがわかりやすくなります。
図面はただでさえ単線の集まりなので、パースを描くための補助的な線は消せた方がわかりやすくなります。
ちなみに見本の下書きではフリクションペンを使用しています。
アイロンやドライヤーで温めると下書きの線がキレイに全て消えてくれます。
注:フリクションでこすって消そうとすると、印刷の線が伸びてしまうことがあります。
アイロンやドライヤーで温めると全て消えます。
消しゴム
下書きの線を消すための消しゴム
定規
このパースは定規を使って描いています。
住宅の営業マンや設計士は早く描くためにフリーハンドで描く人も多いです。
定規で描くと少し時間はかかりますが、誰でも必ずそれなりのパースが描けます。
絵心に自信がない方も必ず描けますので安心してください。
ちなみに上のパースを描いている私も絵心が無さすぎて、絵を描くことが大嫌いでした笑
ですが、パースの描き方を知ると空間や物の描き方がわかるようになり、ある程度のものは描けるようになります。
定規では描けない生き物やキャラクターは全く描けませんが笑
パースで使う定規は平行・垂直が描けるように、定規に線が入っているものがオススメです。
黒ペン
清書をするときのペンです。
パースをわかりやすくするポイントとして、ペンの太さはいくつか用意しましょう。
描く部分に応じて太さを変えると一気にパースがわかりやすくなります。
私の場合は製図向きのインキングペンでステッドラーという会社のものが描きやすくて好きです。
パースでよく使う太さは「0.3」「0.1」「0.05」を使います。
普通のボールペンの場合は一番太いペンを「1.0」または「0.7」を使い、それより細いペンを2種類用意してください。
書いた線の太さが感覚的に違いがわかるくらい太さが違えばOKです。
ちなみに私の使うペンではこれくらいの違いです。
太さの違いがなんとなくわかればOKです。
太さの種類が少ないですが、フリクションなどの消せるボールペンもおすすめです。
パースは慣れていても結構間違えることがあるので、消せるのはすごく便利です。
見栄えも良くなりますし、清書で間違えると結構へこみます。
色鉛筆などの彩色道具
間取りを検討するためなら色塗りはしてもしなくても大丈夫ですが、色を塗るとさらに雰囲気がわかります。
気になる間取りが見つかったら塗ってみるのもいいと思います。
フローリングや壁紙の色、インテリアなどを検証するときは色を塗ると考えやすくなります。
平面図を立体的にしよう!
今回紹介するパースの描き方は1部屋だけを描くこともできます。
リビングや寝室、玄関など気になる場所をピックアップして描いてみてもOKです。
特にこだわりたい部屋の雰囲気が知りたいときにはとても便利です。
Step1 外壁を描く
まずは家の真ん中あたりに「×」マークを描きます。
家の真ん中に壁がある場合、壁からズラして「×」マークします。
見本の図面でも家の中心に壁があるのでズラしています。
1部屋だけを描く場合はその部屋の中心に「×」マークを描きます。
次に定規を使って「×」マークと外壁の角をつないで線を描きます。
隣の角も同様に「×」マークからの線を描きます。
描いた二本の線を外壁と平行な線でつなぎます。
これが南面の壁になります。
元の図面の外壁と平行に書いた線の離れ具合が、立体になったときの「壁の高さ」になります。
平行線を離して描くほど壁が高くなり、立体的に見えます。
そのかわりに細かい部屋は壁に隠れてしまいます。
(今回の見本でもトイレが壁に隠れてしまいました)
ここで描くパースでは正確な高さを描くことはできないので、好みで高さを決めてOKです。
(この記事の最後の方に壁が低いパターンもあるので参考に決めてください)
上の完成見本のように、窓や扉まで描き込む場合は実際の天井くらいの高さになるように意識して描いてください。
これを次の外壁の角でも同様に繰り返していきます。
壁の高さは同じ高さで途切れさせずにつないでいきます。
家の形がきれいな長方形でなく凹凸がある場合、その凹凸もしっかりと描いていきます。
これを1周続けると外壁ができあがります。
見本のように凹凸が多い家だと、途中でわかりにくくなるかもしれませんが、描き上げていく壁の線は元の図面の壁の線を拡大した線になります。
それを意識すると描きやすいかもしれません。
きっちり正確にかけていないと最後の外壁を描くと、きれいに角で交わらないかもしれません。
(見本でもきれいに描けませんでした笑)
下書きなのできれいに交わらなくても気にする必要はありません。
清書のときに適当にごまかせば大丈夫です笑
外壁の下書きが描けたら、一旦、元の図面と平行に描いていった線を清書します。
ここで描く線はしっかりと一番太いペンで太く描きます。
元の図面の壁の厚みと同じくらい太く描きます。
ボールペンで太さが足りない場合は二重、三重にして太く描きます。
ちなみに見本ではネームペンで清書しました。
ここで清書した線(立ち上げた壁の線)は一番太いペン、壁や床の隅の線を中太ペン、それ以外の線を細ペンと使い分けると、パースが引き立って見やすくなります。
ちなみに現実世界で考えると、「×」マークから伸ばす斜めの線は全て「高さ」を表す線になります。
座標で考えると「Z軸」です。
平面図にZ軸の線を描いていくことで奥行き感が生まれます。
Step2 室内の間仕切り壁を描く
外壁が描けたら、次は間仕切り壁を描いていきます。
間仕切り壁も外壁と同様に、壁の角と「×」マークを結んだ線を描き、壁と平行な線を描いていきます。
外壁の高さを参考にして、同じ高さの壁を描いていきます。
(外壁と交わっている角からスタートすると高さがわかります)
大きな部屋やシンプルな形の部屋から描き始めると感覚が掴みやすく、描きやすいです。
全て書き終えるとこんな感じになります。
ここまでできたら外壁と同じ太い線で間仕切り壁の清書をします。
次に「×」マークを基準に描いていった壁の角の斜め線を清書するのですが、
少し気をつけてほしいところがあります。
この↑納戸と可動棚がある部屋(パントリー)では、下書きで書いたピンクの線を清書で書かなくていい線があります。
1カ所だけ壁がT字に交わっている壁があり、このような場所は要注意です。
見る角度によって清書の線が必要だったり不要だったりします。
今回の場合は角が見えないので描く必要がありません。
次に、↓このトイレのように手前の壁で奥の壁が隠れている場合。
奥の壁が隠れているので、隅の斜めせんは下まで引かず、手前の壁の位置で止めます。
この2つの注意点は立体になった状態をイメージしながら描かないと間違えてしまいます。
間違えたとしても気にせずに、修正ペンで消したり、フリクションなら擦って修正しましょう。
私もよくやりますし、見本でも間違えてます笑
こうしてできた清書がこちら↓
この段階でも十分に奥行き感が出て、平面図が見やすくなりましたよね!
下書きの線でわかりにくくなったら、その都度消しながら進めてもOKです。
Step3 建具(扉や窓)を描く
元の図面を参考に窓や扉を描いていきます。
建具の枠と「×」マークを結ぶ線を延長させて、先ほど描いた壁に建具を写していきましょう。
建具の横幅は元の図面から写しますが、高さはそれっぽく見えるように描いていきます。
もし、最初に壁を低く描いている場合は建具を描かないというのもありです。↓
建具の下書きを終えるとこんな感じ↓になります。
次に建具を清書していきますが、平面図から窓の種類や大きさがわかるようになると、より実際に近いパースが描けます。
このように↑平面図だけでは窓の種類の特定はできません。
(平面図では同じ記号でもいろいろな窓を表します)
打ち合わせが進み、窓の種類が分かっていれば描き込めばいいですが、わからない場合は「引き違い窓」「両開き窓」「それ以外」で描き分ければ問題ありません。
また、平面図では窓の横幅はわかりますが、縦の大きさはわかりません。
このパースはあくまでも間取りの雰囲気が分かるようになることが目的なので、それっぽい窓が描ければOKです。
正確な絵を描くことが目的ではないので、ある程度は割り切ってしまいましょう。
見本のように詳細に描いてある図面になると窓の近くに5桁(または6桁)の番号が書いてあります。
これは窓の大きさを意味してあります。
はじめの3桁は横幅、後ろの2桁が窓の高さを表しています。
はじめの3桁にそのまま「cm」の単位をつけた寸法が横幅、後ろの2桁に「0」をつけた寸法が高さで単位は「cm」です。
窓の数字が6桁の場合は、はじめの3桁に「cm」で横幅、後ろの3桁に「cm」で高さを表しています。
立面図がある場合はそれを参考にそれっぽい大きさで描き込んでいきます。
他の窓と比べて、窓の大きさが大きいか小さいかを表現できれば十分です。
また、平面図だけでは窓が床からどれくらいの高さでついているかはわかりません。
立面図があればなんとなくの高さはわかるのですが、わからないものはどうしようもないので、これもそれっぽい高さにすれば大丈夫です。
見本の図面では「掃き出し窓(床と窓が接している大きな窓)」だけはわかるように記載がありました。
それがこの↓記号です。
この窓の真ん中に「両端に矢印のある記号」が記載してあります。
(ちなみに玄関や勝手口、扉にもついています)
これは「ここの開口部(窓や扉があるところ)は人が出入りできますよ」を意味しています。
つまり、窓から人が出入りできるということは「その窓は掃き出し窓である」ということです。
なので、この掃き出し窓に関しては床から窓を描けばOKです。
また、この出入りできる記号が書いていない場合でも、窓の大きさを表す5桁の数字の記載がある場合は、下2桁が「22」や「20」だったら、だいたい掃き出し窓です。
「22」→窓の縦の大きさ220cm(2.2m)
「20」→窓の縦の大きさ200cm(2m)
なので、それだけ大きな窓は床から天井付近までの高さがあります。
このように窓や扉を配置して清書したものがこちら↓です。
建具の清書では一番細いペンを使っています。
また、建具は枠を意識して二重線で描くと建具っぽくなり、わかりやすいパースになります。
引き違い窓を描くときは窓を2分割すると引き違い窓ができあがります。
Step4 家具を描き込む
Step3まででも十分、平面図に奥行き感ができてわかりやすい図面になりました。
ここまででも空間を把握するには十分なのですが、さらに検討していきたい場合は家具を描き込んでいきます。
ベッドや机、椅子、棚などの家具を描き込むと、
・通路の幅は確保できているか
・部屋は狭くないか
・使い勝手は悪くないか
などいろいろな検証ができます。
見本のように元の図面にキッチンや冷蔵庫などの記載がある場合は、その場所から「×」マークを基準に高さを与えていけば、家具を表す直方体が描けます。
見本のように棚の引き出しなど細かい描写は描かずに直方体の箱だけを描いても大丈夫です。
間取りがおおかた決まってきたら家具を配置して検討してみてください。
家具の配置が終わったら床と壁が接している部分の線をペン(中太)で描いていきます。
家具を描かない場合は建具の描き込み後に描きます。
Step5 色を塗る
これで清書まで終わりました。
ここまで描けば空間を把握するには十分すぎる完成度です。
図面の見方がわからないと少し難しいかもしれませんが、慣れれば誰でも見本くらいのパースなら描けるようになります。
Step5ではこのパースに色を塗っていきます。
間取りを考えるだけなら色塗りまでする必要はありませんが、
間取りが決まり、フローリングや壁の色、家具やカーテンなどインテリアを決めたいときに色塗りをすると、具体的な雰囲気を把握できます。
特に壁の1面だけ色を変えたり、アクセントのある家具を置きたいときにはパースでシュミレーションできると、
不安が解消されて失敗を防ぐことができます。
色を塗るときのポイントは「明るい面」「中くらいの面」「暗い面」を意識して色分けすると、さらに立体感が増します。
上面を一番明るい面、側面の一方を中くらいの面、もう一方を暗い面で色分けをします。
(↑直方体をもとに家具や家電を描くと簡単に描くことができます)
ここまでできれば十二分に完成です!
もっと簡単にもできる!
今回紹介したパースは、やり方自体は簡単ですが、建具や家具の描き込みが多かったので難しく感じたかもしれません。
ですが、同じ方法で もっと簡単に 空間を把握することもできます。
解説の途中でも登場しましたが、このように↓壁を低く描いても、元の平面図と比べて空間の把握がしやすくなります。
このように描く方法は、一番最初の外壁を描くときに、外壁を表す平行線を元の図面の近くに描くだけです。
壁が低いパースでは窓が描けないことが多いので、
・わかりずらい平面図の空間把握のため
・生活しにくくないか家族の動きをシュミレーション
など、初期段階の間取りの検証に利用できます。
このパースなら慣れれば10分くらいで描けるので、どんどん活用してみてください。
図面の中を歩けるようになる
私が建築学生の頃、間取りを考えることが下手だった私に対して、設計の先生から「図面の中を歩いてみればいいんだよ」と言われたことがあります。
「いやいや、意味がわからん」と思いながらも、人差し指と中指で平面図の中をテクテク歩いていました。
ですが、今回のように平面図をパースに描き変えると一気に空間を把握しやすくなり、図面の中を歩いて回れるようになります。
そして、このパースの中で家族みんなが暮らしているところを想像してみてください。
家族一人一人がその家の中でどのような動きをしているか。
使いにくいところはないか。
もっと良くするにはどうしたらいいか。
お客さんが来ても問題はないか。
などなど、いろいろなパターンで日常生活をシュミレーションしてみてください。
このシュミレーションの繰り返しで、あなたの間取りに対する不安や後悔はどんどん減っていくはずです。
こだわりの1部屋を立体化するときのポイントをこちらの記事↓で紹介しています。
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今回紹介した方法で描けるので、一緒にマスターしておくと便利ですよ!