現在、「ウッドショック」という状況により、世界全体で木造住宅の木材不足や価格高騰が懸念されています。
家づくりの検討をしている方にとってはどうしていいか分からず、不安なことと思います。
ウッドショックの原因やいま日本が置かれている状況、これらを踏まえて今後、家づくりをどうしたらいいかなど、少しでも疑問や不安を解消できるように解説していきます。
焦りや不安があるとは思いますが、ここは冷静に家づくりを検討していきましょう!
この記事を読んででわかること!
- ウッドショックって何?
- ウッドショックの原因
- 2021年5月現在の住宅会社の状況
- なぜ、森林の放置が問題になっている日本でも木材が不足しているのか
- 「木材価格が1年前の4倍?!」ってほんと??
- 家づくりを検討している場合、どうしたらいいのか
- 焦って家を建てたら失敗する?!
- 家づくりで失敗しないための正しい戦略
ウッドショックとは
新型コロナや海外において木材需要の増加の影響で、世界的に木材が不足し、日本国内での木材価格が高騰しています。
このことを「ウッドショック」と言われています。
ウッドショックの原因
日本の建築用木材は 約6割 を輸入に頼っています。
その輸入先のうち、2大木材生産国であるアメリカと中国では、コロナからの経済回復のため住宅需要が高まり、木材の使用量が増加しています。
アメリカではコロナによるテレワークの推進や近年稀にみる低金利の影響で住宅建設が急増しています。
そんな2大生産国で大量に木材が消費されているので、日本への木材の輸入量が減少しているのです。
住宅の建設が急増しているアメリカでは、木材の需要が増加した影響で、木材の価格も高騰しています。
シカゴ・マーカンタイル取引所の木材先物価格チャートでは去年の4月から比べると1年で 約4倍 ほどの価格高騰しています。
それに加えて、コロナによる物流の混乱から、海上輸送の慢性的なコンテナ不足も影響し、木材不足と価格高騰に拍車をかけています。(輸入している木材のほとんどは海上輸送です)
木材が不足しているからといって、今ある樹木をどんどん切り倒して使えばいいかというと、そういうわけにはいきません。
木材の生産は計画的に行わなければ成り立ちません。
木が木材として使用できるようになるまでには50年かかると言われています。
需要があるからといってどんどん切り倒してしまうと、遅かれ早かれ木材不足を避けることができません。
さらに、無秩序な伐採は環境の悪化も懸念されます。
なので、いま使うことができる木材の絶対量を2大生産国で大量に消費されると、他の国に回す分がなくなり、世界的な木材不足、価格高騰へとつながっていくのです。
2021年5月現在の日本の状況は??
現在の日本では、樹種によって違いはありますが、コロナ前の木材価格と比べると、大体1.3~1.5倍ほどに上がっています。
昨年はコロナの影響で木材価格は例年より安くなっていましたが、昨年の10月ごろには例年ほどに上昇し、現在まで上がり続けています。
ただし、木材の価格は上がっていますが、お客さんに影響がある住宅の販売価格は今のところ上げていない会社も多いようです。
住宅会社によっては販売価格を上げることを余儀なくされている会社や、そもそも木材が入らずに困っている会社もあるようです。
「状況によっては納期が遅れる可能性がある」という旨を契約書に加えている会社もあるようで、ウッドショックが長引けば住宅の販売価格を上げざる終えなくなるかもしれません。
とくに輸入材を中心に使っている2×4(ツーバイフォー)やローコストの住宅会社は苦労しているのではないでしょうか。
ウッドショックは「アメリカの低金利政策の影響で少なくとも年内は続くのではないか」という見方もあるようです。
しばらくは解消されそうにないウッドショックに対応して、住宅メーカーでは国産材にシフトしたり、価格変動の少ない樹種の活用するなど新しい取り組みも行っているようです。
ウッドショックのそもそもの原因
ウッドショックの根本的な原因は「日本が輸入材に頼りすぎていること」です。
日本の国土の7割は森林に覆われています。
ですが、多くの森林や山々は人の手が行き届いておらず、放置されているのが現状です。
日本の住宅では鉄骨造や鉄筋コンクリート造の住宅が増えてきましたが、まだまだ主流は木造です。
それにも関わらず、日本の木材を使用せずに建築木材の約6割もの量を輸入しています。
価格の安い輸入木材におされて、国産の木材も価格下げざるを得なくなりました。
そのため、日本の木の生産者は費用対効果が悪くなり、山や森林を放棄してしまったのです。
そのような状態が長く続き、今になっていきなり「国産材がほしい!」と言われても、仕組みや設備が整っていないので、すぐには需要に追いつかない状況です。
私としてはこれを機に国産材の重要性を見つめ直し、放置された森林の改善や林業の発展に生かしてほしいです。
家づくりを考えていた人はどうしたらいいのか?
まずは冷静に焦らないことが大切です。
テレビやネットニュースを見ていると「早く家を建てないと、どんどん家が高くなってしまうのではないか」と不安になってしまいます。
それらのメディアでは「木材の価格が1年間で4倍にも高騰しています」なんて言うので、そりゃあ焦りますよね。
でも、テレビもネットニュースも見てもらうことが仕事なので、多少大げさな表現をして、注目を集めることは一種のテクニックです。
先ほどもお伝えした通り、「木材の価格が4倍になっている」のはあくまでも「シカゴ・マーカンタイル取引所の木材先物価格チャート」の話です。
日本では木材不足や価格の上昇はありますが、現状では例年の1.3~1.5倍程度です。
多少値上がりしていることは確かですが、アメリカのような極端な値上がりをしていくとは考えにくいです。
極端な値上げをしてしまうと、更なる経済の悪化や木材離れを起こしてしまうなどデメリットが多すぎるからです。
そうなる前に日本に有り余っている国産材を有効活用できるようなシステムを構築した方が日本としてのメリットは大きいです。
住宅会社に相談しに行っても「早く建てないと材料が高騰してしまうよ」と不安を煽られるかもしれません。
それでも、よほどの理由がない限りは今は焦らずに待ちましょう。
先ほど紹介したように住宅会社も輸入材から国産材に変更したり、代替木材を検討したり改善に取り組んでいます。
改善することは大いに結構ではありますが、材料の変更や工法(家の建て方)の変更は非常に大変です。
設計を1から見直したり、検証をする必要があります。
私自身が現場監督だった頃は、1軒1軒家を建てるたびに設計が違う家を建てていたので、設計を変えるときの大変さが身に染みてわかります。
現場で予期していなかった不測の事態が頻繁に起こり、何度も工事をやり直すこともあります。
「今回は仕方ないか」と妥協することもありました。
実際に作業してもらう職人さんたちも迷いながら不慣れな作業になります。
住宅会社にとっては何軒も建てるうちの1軒かもしれませんが、お客さんからしたら一生に一度の大切な1軒です。
住宅会社が企業努力で改善を頑張ってくれるのは良いことですが、急いで契約を決めてしまうのは危険です。
家づくりは「どれだけ準備をしてきたか」で成功と失敗が分かれます。
急いで準備をしたとしても、契約をするまでには数ヶ月はかかります。
どれほど時間がかかるか具体的に考えてみましょう。
まず、家づくりを始めるときは自分たちの「家」に対する考えや要望をまとめないといけません。
考えをまとめないと、見た目や金額、その時の気分に流されて、あとで後悔ばかりが出てくる家になってしまいます。
「自分たちは何のために家を建てるのか」
「何を叶えるために家を買うのか」
「それを叶えるためには何が必要か、今の暮らしから何を改善しないといけないのか」
「そのためにはどうしたらいいのか」
「その理想の暮らしを叶えてくれる会社はどこなのか」
などなど…。
次に信頼のできる会社を見つけたら、「自分たちの想いを叶えるためにどんな間取りがいいのか」「どの土地なら理想を叶えられるのか」など、予算も含めて検討していく必要があります。
土地探しはどれだけ急いでいても、結局は「ご縁」です。
100%理想通り土地に出会うことはほとんどありません。
自分たちの要望と照らし合わせながら、どの土地がいいか地道に探していくしかありません。
土地が決まれば再度プランを煮詰め直し、ようやく契約になります。
これだけの準備をいきなり始めて、急いで契約しようとしても無茶があります。
特に「信頼できる会社を見つけるまで」の事前準備は本当に時間がかかるし、時間をかけて慎重に進めないといけません。
ここまでの事前準備が 家づくりの失敗と成功の命運が分かれるポイント といっても過言ではありません。
まとめ
家づくりは焦って進めても、本当に良いことがありません。
・「価格が高騰していくかもしれないから」と適当に決めたプランで、
・「木材供給状況によっては納期が遅れる可能性があります」と書いてある契約書にサインしてして、
・完成までの納期が曖昧なまま、引越しの予定なども立てることができずに不安な毎日を過ごし、
・急いで契約してしまったがために「ここのプランもっとこうすればよかった」と後悔だらけの家づくりになってしまう
そんな 未来 が手に取るように見えてきます。
こうならないためにも適切な順序で、しっかりと家づくりの準備をする必要があります。
私のホームページでは失敗しないために家づくりの準備ができる「家づくりノート」を公開しています。
ノートの手順に従って取り組むだけで、自分たちの家づくりが進められるように構成されています。
「家づくりノート」を使うメリットなど詳しいことは下のリンクに書いてありますので是非ご覧ください。