家づくりを調べていると「健康住宅」や「自然素材の家」という言葉を目にしますよね。
自然素材って体に良さそうだし、温かみがある空間になるので、最近注目されています。
自然素材を使った健康住宅を建てる工務店に勤めていた元現場監督の私が、自然素材の住宅を徹底解説します!
ちなみに、今は自然素材を使った家に住んでいるので、ぜひ参考にしてみてください。
※ このページでは自然素材と比べるために、一般的なフローリングやビニールクロスなどを「工業製品」と表現します。
この記事の目次
「 自然素材の家 」ってどんな家?
「自然素材の家」は、その文字通り、自然な素材(材料)で建てられた住宅のことです。
木造住宅であれば、全ての家が「自然素材の家」なのでは?と思うかもしれません。
実は、そうではありません。
木材を使っていても、その木材が自然な状態に近い木材か、それとも工業製品か、で区別されています。
自然な状態に近い木材とは、一本の丸太から切り出された木材です。
一般的には無垢材といわれています。
そして、工業製品の木材とは、いくつかの木材を接着剤で貼り合わせて整形した木材です。
こちらは集成材や合板といわれます。
お肉で例えるなら、肉の塊から切り出されたお肉が自然な状態に近いお肉。
切り出したお肉を脂や接着剤を混ぜて整形した成型肉が工業製品。というイメージです。
このように、なるべく自然に近い状態の材料を使って建てた住宅を「自然素材の家」といいます。
ちなみに、木材だけでなく、壁や床、断熱材なども自然素材のものがあります。
家を建てる材料のうち、どれだけ自然素材を使ったら「自然素材の家」になるか、といった定義はないので、各々の会社の判断に委ねられています。
そのため、自然素材の家を建てたつもりだったけど、実はほとんどの材料が工業製品だった。なんてこともあるので注意してください。
「自然素材」ってどんな材料?
先ほどもお話しした通り、「自然素材」とは自然に近い状態の材料のことです。
「自然に近い状態」と面倒くさい言い方をしている理由は、家が建てやすいように多少は加工しているからです。
木材であれば、丸太のまま使うのは現実的ではないので、角材に切り出して、乾燥させてから使用します。
ただし、集成材や合板のように接着して成型するほどの加工をしてはいないので、自然に近い状態となります。
具体的によく利用される自然素材を紹介します。
無垢の木材(無垢材)
無垢材とは何か。については先ほどお話ししていますので、そちらをご覧ください。
ひと言で「無垢材」といってもさまざまです。
木の種類や産地、乾燥方法など、それぞれで特徴や価格も異なりますので、よく考えて決める必要があります。
あげ始めたらキリがないので、代表的な木材や選ぶときのポイントについて解説していきます。
ちなみに、木材を考える時に勘違いしやすい点は、「柔らかいから弱い」ではない!ということです。
「柔らかさ≠強さ」です。
柔らかければ弱そうに感じますが、風や地震などの力をしなることで受け流しています。
街路樹が風でなびいている様子をイメージしてください。
なびいて変形していますが、折れることなく元の形に戻っています。
家の場合はそれほどの変形はしませんが、しなることで地震などの大きな力に耐えています。
逆に、硬い木材なら強いのかというとそうとも限りません。
硬いということは地震などの力に動かずに持ち堪えます。
しかし、「堅い木は折れる」という言葉の通り、硬すぎると少し曲がっただけで折れてしまいます。
なので、木材を選ぶときは「硬さ・柔らかさ」ではなく、「強さ」を参考にしてください。
杉(スギ)
杉は木材の中では非常に柔らかい木材です。
柔らかいと言っても、成長すると数十メートルにもなる木なので、柱や梁などの構造材にも使われる木材です。
柔らかい材料なので、床に使うと傷がつきやすいです。
しかし、柔らかいというのは、「木の細胞の中に多くの空気を含んでいる」ということです。
空気をたくさん含んでいるので、肌触りは優しく温かいのが特徴です。
一般的なフローリングや堅い広葉樹の無垢のフローリングと比べても、触れたときの冷たさが全く違います。
檜・桧(ヒノキ)
杉と比べると硬い木材です。
肌触りも杉と比べると硬い感じがわかります。
その分、傷はつきにくいです。
ちなみに今、私は無垢のヒノキフローリングの家に住んでいます。
自分でリフォームをして張り替えました。
そして、現場監督の頃は無垢の杉フローリングの家を建てていました。
どちらも塗装をしていないフローリングですが、
やはり、今のヒノキのフローリングの方が傷はつきにくいです。
工具や子どものおもちゃを落として、当時現場監督の頃なら傷がついてしまったようなことでも、ヒノキのフローリングでは傷がついておらず、「やっぱりヒノキは硬いんだなあ」と実感します。
しかし、ヒノキやほかの硬い木材であっても、無垢の木材は普通のフローリングよりも柔らかいです。
なので、無垢の木材を使うということは 傷や凹みがつくことは 当たり前 だと思ってください。
そのようなデメリットがあっても、無垢の床は気持ちがいいので張り替えましたし、今のところ後悔はないです。
傷や凹みが許せない方は無垢のフローリングは諦めた方がいいかもしれません。
ちなみに無垢で無塗装のフローリングは気持ちがいいのですが、食べ物や飲み物をこぼすと、すぐに吸ってしまいます。
そのため、汚れも残りやすいです。
私の家では室内で犬を飼っていますが、イジけると嫌がらせでよくトイレの外におしっこやウンチをします。
やはり、それらの跡もしっかり残っています。
朝、寝ぼけてトイレを失敗したときの濃いぃ一番搾りのやつをされたときはガックシきます。笑
そんなことがあってもやっぱり無垢のフローリングは気持ちがいいです。
そもそも、犬や幼い息子がトイレを失敗したり、何かこぼして汚れることは覚悟の上で無垢材を使っています。
どうしても汚れが気になり始めたら、自然由来の塗料でも塗ろうかなと考えています。
木の種類で特徴が異なりますが、ここで気をつけてほしいことがあります。
先ほども話した通り、無垢材には木の種類の他に「産地」や「乾燥方法」によって特徴が変化します。
日本は寒冷地域から亜熱帯地域、湿気の多い地域や乾燥する地域など様々な気候の地域があります。
輸入木材のことも考えるとさらに多くの気候の地域の木材があります。
人間と同じように木もその地域に合った性質で成長していきます。
同じ樹種でもシロアリが多い地域ではシロアリに食べられないように油分を多く蓄えます。
なので、そのような木を柱や梁に使うと自然とお家もシロアリに強くなります。
逆にシロアリが少ない地域の木材だと、シロアリから身を守る術をもっていないので、シロアリが多い地域で使用すると被害を受けやすくなります。
つまり、自分たちが家を建てたい地域に合う木材はその地域に生息している木ということです。
木材も農作物と同じで、本当は地産地消が大切 なのです。
しかし、残念ながら地元の木材を使ってもその木の本来の良さが活かされない場合があります。
それが関わってくるのが、「乾燥方法」です。
木材は材料として使うまでに乾燥させてから使います。
木を切り倒してすぐは根っこから吸い上げていた水分をたくさん含んでいます。
そのまま材料として使ってしまうと、乾燥するときに木材が収縮したり、曲がったりしてしまうので、ある程度乾燥してからまっすぐに整形して使います。
その乾燥方法によっても木材の性質が変わってしまうのです。
本来の乾燥方法は天日干しでじっくりと木が乾燥するのを待つ方法ですが、それだと材料として使えるようになるまでに半年以上かかってしまいます。
(これを「自然乾燥」といいます)
なので、今では効率良く乾燥させるために高温のスチーム釜に入れて一気に水分を飛ばす方法が主流です。
(これを「機械乾燥」といいます)
この方法なら1、2週間で木材が乾燥します。
ただし、一気に水分を飛ばすため木の細胞を壊しやすく、木のうま味でもある油分も一緒に抜けてしまいます。
そうなると、水分やシロアリに強いはずだった木材でも材料として使うころには期待はずれのものになってしまうのです。
なので、「杉を使ったから良い」とか「ヒノキだから良い」というものではなく、「きちんとした材料を使っているか」が重要 です。
話がややこしくなってしまいましたが、「きちんとした木材かどうか」を確認する方法は意外と簡単です。
家を建てる会社に「使っている木材にこだわりがあるか」を聞いてみてください。
きちんと意識をしている会社は、木材の生産地、乾燥方法、どんな特徴で、その特徴をどのように活かしているかすぐに説明してくれます。
ただ単に「ヒノキだから水に強いですよ」と樹種の特徴しか言えない会社ではこだわりは感じられないです。
漆喰
以前から自然素材として注目されている漆喰です。
漆喰の主原料には消石灰が使われています。
以前に運動場の白線を引くのに使用されていたのが消石灰です。
その消石灰にスサというつなぎやノリを混ぜて作られています。
消石灰も元々は石灰岩からできているので、漆喰も自然素材とされています。
少なくとも壁紙よりは自然に近いため自然素材です。
ちなみに私が現場監督のころの会社では漆喰の塗り壁を標準で工事していましたし、今住んでいる家も漆喰の壁です。
漆喰は空気中の二酸化炭素を吸収して硬くなる性質があります。
漆喰の中の消石灰と二酸化炭素が結合することで、元の石灰岩へ戻っていきます。
とは言っても、石灰岩に戻るまでには100年以上の長い年月が掛かります。
その間、ゆっくりと呼吸しながら二酸化炭素を吸収してくれるのでクリーンで健康的な材料とされています。
また、調湿効果もあるので、室内を快適な環境にしてくれます。
ビニールクロスと比べて、漆喰はひび割れや欠けなどの不安をよく耳にするかもしれません。
しかし、実際は一般的な壁紙とさほど変わりません。
ビニールクロスの壁紙の家でも、家具をぶつけると破れますし、カドを引っかかると傷がつきます。
漆喰の壁でも同じです。強い衝撃が加われば、剥がれたり、傷がついたりします。
漆喰の一部が剥がれるとそこからポロポロと剥がれやすくなりますが、ビニールクロスでも一部が剥がれ始めるとそこからどんどん広がっていきます。
漆喰だから気をつけないと!というものは特にはないと思います。
あえて言うのであれば、漆喰を塗ってすぐの1ヶ月くらいは意識的に換気をしたほうがいいくらいです。
しっかりと乾燥するまでに水分がたくさん蒸発するので、換気をしないとカビの原因になります。
たくさん水分を出して乾燥すれば、その分しっかりと調湿をしてくれるようになります。
漆喰はビニールクロスと違って静電気を帯にくいので、ビニールクロスのようにホコリなどで黒ずむような汚れは付きにくいです。
また、もし漆喰が剥がれてしまって塗り直す、なんてときでも漆喰なら他の壁と同じ色で同じ模様に修理することが可能です。
ビニールクロスの場合はどのメーカーでも柄の更新が早いので、柄によっては半年ほどで入手できなくなるものもあります。
そのため、一部の貼り直した壁だけ柄違いになったり、1部屋すべての壁紙を貼り直すことになる。ということも珍しくありません。
壁紙は数年で黒ずんだり日焼けをするので、補修した箇所が目立ってしまいます。
しかし、漆喰だと汚れにくいので、補修しても目立ちません。
日本のお城の多くは漆喰が塗られていますが、それを見ても、長い年月が経っても白くてきれいな状態が保たれているので、漆喰のすごさをわかっていただけるかと思います。
珪藻土
珪藻土も最近では「塗り壁」の代名詞と言えるくらい注目されていました。
そこから派生して、珪藻土のバスマットやコースター、乾燥剤などの商品化がされています。
珪藻土の主原料は名前の通り、珪藻の土です。
珪藻というのは藻類の単細胞生物で、海や川、湖など水の中に生息しています。
その微生物が死んで、堆積して土になったものが「珪藻の土」になります。
その珪藻の土を塗り壁の材料にするために加工したものが「珪藻土」です。
珪藻土の特徴は何と言っても 吸水性 ではないでしょうか。
珪藻土のバスマットからもわかるように水をよく吸ってくれます。
そのため、室内を 調湿 してくれるので、快適な空間を作ることができます。
ただし、珪藻土が吸う水の量にも限界はあります。
珪藻土のバスマットでも使い続けると水の吸いが悪くなっていきます。
バスマットの場合は風通しが良い場所で干して、湿気を出してやる必要がありますが、室内の塗り壁はそういうわけにもいきません。
なので、ずっと湿気が強い場所で珪藻土を使用すると、湿気対策で珪藻土を使用したつもりが、かえって珪藻土がカビる原因になってしまうこともあります。
自然素材の家のメリット・デメリット!
自然由来の家なんだから良さそうに思えるかもしれませんが、やはり、どんなものでもデメリットはあります。
自然素材の住宅は向いてる人とそうでない人が結構分かれるので、メリットとデメリットを参考に考えてみてください。
一般的に言われている「自然素材の家=体に良い」みたいな一般論は気にせずに、「自分にとってこのデメリットは許せるか許せないか」をしっかり考えていくと、あとで後悔しなくて済むかもしれません。
まずはデメリットから紹介するので、そのデメリットをメリットが上回るようでしたら、自然素材住宅を検討するのもアリだと思います。
私の価値観では、デメリットは「無垢材だから当たり前」という感覚で、メリットの良さの方が上回っているので自然素材をどんどん使用しました。
デメリット
初期費用が高い
やはり、自然素材の材料は材料費や工賃が高くなります。
自然のものは材料になるまでのコストや手間が掛かるので材料費が高くなります。
例えば、無垢の柱と集成材(いくつかの木材を接着剤で貼り合わせて作った材料)の柱を比べてみます。
無垢の柱では10センチ角の柱を作るのに最低でも10センチ以上の太さの丸太が必要です。
それと比べて集成材では、いくつかの木材を貼り合わせて10センチ角の柱を作るので、小さい木材も利用できます。
木が大きく育つのを待たなくても大きな材料を作ることができるのです。
さらに、丸太から製材するときに出る端材も集成材として活用できます。
そのため、工業製品の集成材と比べて、無垢材は高くなる傾向があります。
反り、曲がり、割れが生じる可能性がある
木材は反ったり曲がったり割れたりします。
特に無垢材は集成材や合板と比べて、それが生じやすいです。
これらが生じる原因は木材の 乾燥による収縮 です。
丸太の状態で木の中心側(木裏)と表面側(木表)で収縮する大きさが違います。
木表の方が収縮が大きいので、その収縮率の違いから反りや曲がり、割れが生じます。
反りなどをできるだけ少なくするために、木材は出荷前に乾燥させた状態で加工しますが、それでも無垢材は変形しやすいです。
集成材は小さな角材を接着剤で貼り合わせて一本の角材を作ります。
1つ1つは小さい木材なのでしっかり乾燥させて変形を小さくできます。
さらに接着剤で固めるので集成材の方が無垢材と比べると変形が少なくなります。
変形が大きいとフローリングの場合、乾燥して隙間が生じたり、逆に湿気が多いと膨張して波打ってしまうこともあります。
柱や梁が曲がると扉やふすまの建て付けが悪くなったり、壁や天井にヒビが入ることもあります。
さらに変形や傾きが大きくなると、外壁にヒビが入ってしまい雨漏りの原因にもなってしまいます。
汚れが残りやすい
無垢材は水分や汚れを吸ってしまうので拭き取っても汚れが残りやすいです。
(「無垢材」の考え方は個人差があるので、ワックスや塗料を塗っていない無垢材についてお話しします。詳しくは後述します。)
やはり、ワックスでテカテカの木材と比べると汚れが付着しやすいです。
我が家では子どもも小さいし、犬もいるので結構大変です。
子どもには飲み食いは椅子に座って机で行うように教育しているので、まだ大丈夫です。
おしっこをもらしてもすぐに教えてくれるので、すぐ拭き取ればあまり汚れも残りません。
しかし、犬が少し厄介ですね。笑
老犬になってトイレを失敗することも多くなりました。
その失敗しているおしっこやウンチにすぐに気がつかないと、しっかりシミになって残っています。
無垢の床材なので汚れや傷は仕方がないし、遅かれ早かれ付きますので「まあ仕方ないか」と思っています。
ただ、トイレの外のおしっこやウンチを見つけると落胆は大きいです。笑
どうしても気になり始めたら、自然由来の塗料を塗ればいいかなと考えています。
傷が付きやすい
無垢の材料は傷がつきやすいです。
一般的な家の木材は接着剤や塗料、ワックスでカチカチに仕上がっているので傷がつきにくいです。
壁紙でも傷がつきにくいものや汚れもすぐに拭き取れるものもあります。
それと比べてしまうと、どうしても傷がつきやすいです。
材料の個体差が大きい
自然素材の材料は自然に近い状態で使用するので、同じ材料でも1つ1つに違いがあります。
模様や色味が違うのは当然ですが、強度や品質も工業製品と比べるとばらつきがあります。
例えば、木材は基本的に節があると強度の弱点になりやすいです。
無垢材だと1本の木から材料を切り出すので、節が多い部分が一本の材料に集中してしまうかもしれません。
また、切り出す元の木がクセが強い木かもしれません。(クセが強いと極端に反ったりねじれたりするので好まれていません)
逆に、節が一つもなく非常に品質の良い材料が取れるかもしれません。
無垢材はこのような品質のばらつきが生じやすいです。
集成材だと、たくさんの小さい角材を集まって1つの材料が作られています。
たくさんの小さな角材の中には節が有る部分も無い部分もあります。
節が有る部分が入る可能性は高いですが、品質の良い部分も低い部分も均等に含まれます。
そのため、無垢材と比べると集成材の方が品質のばらつきは少ないです。
職人や施工会社による技量差が出る
上記のデメリットでもお話しした通り、自然素材は反りや曲がり、乾燥収縮などクセがあったり、1つ1つの個体差が大きい材料です。
そんな材料の性質を熟知し、その性質を活かした使い方をしないと、乾燥収縮によるひび割れや真冬にすきま風が入り込んだりと支障がでてきます。
自然素材と比べて、工業製品はそのような材料の個体差やクセな非常に少なく、工事がやりやすいように加工してあります。
そのような工業製品の材料で家を建てている大工さんは「まるでプラモデルを作っているようだ」と言うほどです。
普段からプラモデルのような家を建てている職人さんにいきなり無垢材を渡して、「自分で1つ1つ材料を選別して、加工して使ってください」とお願いしてもムリがあります。
ムリにお願いしても結局あとから不具合がでてきてしまうかもしれません。
メリット
デメリットを先に見てしまうと結構落胆してしまうかもしれませんよね。
自然素材の住宅は見ためや雰囲気が良いので、憧れていた人も多いと思います。
でも、現実をしっかり受け入れて、それでも「自然素材がいい!」と思わないと結局後悔してしまいます。
良いところだけを見て「やっぱり自然素材なんてやめとけばよかった。」と後悔しないように、先にデメリットを紹介しました。
このデメリットを受け入れて、次に紹介するメリットの方が上回るようなら、自然素材の住宅に向いているかもしれませんね!
日本の気候に合っている
日本は高温多湿の地域が多いです。
夏は暑い上にジメジメして、冬は寒く乾燥して風邪を引きやすくなります。
それに適しているのが自然素材です。
自然素材は調湿をしてくれる材料が多いです。
湿度が高い時は吸湿して湿度を下げてくれて、湿度が低い時は材料の中の水分を放湿して湿度を上げてくれます。
ちなみに、人が暖かさや寒さを感じる原因として、気温の他にも 湿度 が関わってきます。
同じ30度の気温でも湿度が高くジメジメしていると体感して暑く感じ、湿度が低くカラっとしていると涼しく感じます。
冬場でも同じ気温で湿度が高いと暖かく感じ、湿度が低いと寒く感じます。
そのため、夏場のジメジメの時に湿気を吸ってくれると、湿度が下がり涼しく感じ、冬場の乾燥している時に水分を放湿して暖かく感じます。
さらに、夏場に湿度が下がるのでカビの発生やダニの繁殖を抑制してくれて、冬場の湿度を上げて風邪の予防にもつながります。
このようにエアコンや空調機などの機械に頼らず、日本の自然な環境に適応する自然素材や昔ながらのお家は魅力的ですよね。
心地が良く、肌触りも良い
自然素材の住宅は見ただけでも「気持ち良さそうだなぁ」と感じるものが多いです。
そこに一番魅力を感じ、憧れる方も多いのではないでしょうか。
自然素材の家は見た目だけではなく、触り心地や居心地も最高です。
これはぜひモデルハウスや見学会で実際に体感してみてください。
まず見た目は人工物ではない自然な色味、そして模様の違いが癒しの効果として大きいのではないでしょうか。
人工的なフローリングや壁紙のビニールクロスの光沢はたしかに綺麗に見えますが、自然界でピカピカ反射しているものはそこまで多くありません。
自然素材はマットな表面で反射を抑えて自然と落ち着くことができます。
そして人工物では決して再現できないのが「1/fのゆらぎ」です。
自然な木目の模様や漆喰の模様がリラックス効果を高めてくれます。
一般的な工業製品のフローリングや壁紙でも木目や模様は入っていますが、どうしても繰り返しの同じ模様になってしまいます。
自然界の唯一無二の模様は自然素材でしか表現できないのです。
掃除がラク?!
意外かもしれませんが、実は、自然素材はそうじが楽なんです。
普通のフローリングの上に髪の毛が落ちていると、なかなかつまめない経験ありませんか?
案外拾えなくて、イラっとするんですよね。
あれって髪の毛が細いからつまめないワケではないんです。
フローリングとの静電気で髪の毛がくっついているからなかなか取れないんです。
工業製品は静電気が帯電しやすいのでホコリや汚れがくっついてしまうんです。
それと比べて自然素材は静電気が帯電しにくいので髪の毛が簡単に拾えます。
ペットの毛もほうきでササっと掃くだけで簡単に集めることができます。
極端な話、窓を開けて風を通すとホコリがコロコロ転がっていきます笑
なので、実は自然素材は掃除が楽なんです。
ビニールクロスも静電気を帯びるので、スイッチの周りなどよく触れるところはどんどん黒ずんでいきますが、漆喰だと黒ずみにくいです。
メンテナンスがラク?!
デメリットでは「自然素材は傷がつきやすい」とか「汚れやすい」と紹介したのに「メンテナンスが楽!」というのは矛盾していますよね。
たしかに自然素材は傷や汚れがつきやすいです。
しかし、その補修は工業製品と比べて自然素材の方が簡単です。
工業製品のフローリングに傷や凹みがついたら、フローリングの色に合わせた補修のペンを購入して、ヤスリで削ったり、パテで凹みを補修しないといけません。
そうして補修しても、素人の補修では「全く補修の跡がわからない」というところまで直すことは難しいです。
かえって補修した跡の方が目立ってしまい、「やらない方がマシだった」なんてこともよくあります。
それと比べて、無垢のフローリングは少しヤスリで削ればすぐに目立たなくなります。
何かを落として凹んでしまったような傷は
1、お湯をかけてふやかす。
2、当て布をしてアイロンのスチームで温める。
その2ステップで、凹みが膨らみ目立たなくなります。
それでも傷が気になる場合はヤスリで削ればOKです。
紙やすりはホームセンターで80円くらいで売っているので超安上がりです。
漆喰のひび割れや欠けの補修は、新たに上から漆喰を塗れば大丈夫です。
欠けやひび割れが広範囲な場合はすでに塗ってある漆喰が剥がれやすくなっているので、すべて剥がしてから塗り直した方がいいです。
小さな欠けならホームセンターで漆喰補修用にすぐに使える漆喰が売っているのでそれを塗れば大丈夫です。
小さな傷や汚れなら目の細かい紙やすりで削ればきれいになります。
無垢のフローリングの補修と比べると少し面倒に感じるかもしれませんが、漆喰の補修の良さは「自然素材ならいつでも手に入る」という点です。
壁紙は似たような色や模様はあっても、全く同じ物を手に入れることは結構難しいんです。
壁紙の種類は更新が早いので、必要な時にはすでに生産していないことがよくあります。
また、品番やメーカーの記載が無いので生産していても探すのが難しかったりします。
頑張って見つけても1ロール単位じゃないと購入できないことも多いです。(1ロールは10メートルくらい)
壁紙の補修ではその部分だけ模様や色が異なってしまうことが多いです。
また、壁紙は静電気で汚れがつきやすく黒ずみやすいので、補修した箇所だけ壁紙がきれいで目立ちやすいです。
それが嫌なら部屋の壁紙を全て変えるしかありません。
そのように考えると自然素材はメンテナンスが楽なのです。
維持費が安い
自然素材は材料費や工賃は高くなりやすいですが、その後の維持費は安いんです。
家を建てるまでの初期費用は高いけど、長い目で見ると自然素材の家の方が安く済むこともあります。
工業製品の材料の多くは接着剤で貼り付けてあったり、表面が塗料やワックスで仕上げてあります。
工業製品の良さは接着剤や塗料を駆使して材料を安く生産して、安く家が建てられることだと思います。
ですが、これらの接着剤や塗料は寿命があまり長くありません。
フローリングの寿命がワックスがけの頻度にもよりますが、10年から20年ほど(ワックスの寿命は1年くらい)で表面がめくれ上がってきます。
壁紙の耐用年数は結構短く、5年から10年ほどです。
なので、年数が経つと壁紙が剥がれてくるのは仕方がないことなのです。
外壁のサイディングの継ぎ目に防水処理しているコーキングは5年から10年です。
外壁の塗装は10年くらいから考えないといけません。
しかも外壁のコーキングや塗装は2階建以上なら、足場を組む必要があります。
足場を組むだけで、最低でも10年に1回は70万円ほどかかります。
フローリングのワックスがけ
壁紙の張り替え
それをするための掃除・片付け
外壁塗装にコーキング、そして足場…
これらの費用が10年スパンくらいで次々に襲いかかってきます。
家というものは車と一緒で長く使い続けるためにはメンテナンスが必須です。
メンテナンスをしないと、骨組みが痛んだり、そのものが使えなくなり、余計に費用が増えてしまいます。
工業製品と比べて自然素材は、接着剤や塗料は使用しておらず、材料そのもので作られています。
メンテナンスフリーとまでは言えませんが、工業製品と比べると遥かに少なくて済みます。
自然素材の住宅と比較するためにこれぐらいの維持費しか紹介していませんが、実際はもっと多くの維持費がかかります。
家電の多くは寿命が10年
キッチンやお風呂などの水栓金具は10年
風呂釜や給湯器、屋根、照明器具などなど…
維持費を考えるだけで頭が痛くなってきます。
これらを見ていてわかるように10年くらいを境にどんどん修理や交換が必要になってきます。
これらのコストも考えると、自然素材もそこまで高いわけではありません。
「自然素材の住宅」と「従来の家」 どっちの方がいい??
結局のところ、自然素材の家と従来の工業製品で建てる家はどちらの方がいいのでしょうか?
私なりにまとめてみたので、悩んでいる方は参考にしてみてください。
家を建てるのに健康面が少しでも気になるのであれば 「自然素材の家」
工業製品で建てられた従来の家で一番心配なことは健康面です。
接着剤や塗料を用いて作られた材料や家具からは 有害な化学物質 が揮発しています。
その化学物質により発症する代表的な病気が「シックハウス症候群」です。
最近の家は必ず24時間動いている換気扇を設置することが義務付けられています。
その理由は、先ほど話した通り、工業製品の材料から有害な化学物質が発生しているからです。
その換気扇で室内の汚染している空気の濃度を下げています。
いくら換気扇で汚染している空気の濃度を下げても、有害な化学物質は揮発し続けています。
そのため、室内で有害な化学物質が発生している限り、どれだけ気をつけていても病気が発症してしまう可能性はあります。
この病気は誰でも発症する可能性がありますが、特に女性と子どもは発生するリスクが高いと言われています。
ほかにも、何かアレルギーがある人、匂いに敏感な人も注意した方がいいと言われています。
発症のリスクを下げるためにはできる限り、有害な化学物質が飛散する物を減らす ことが一番です。
なので、家を建てるのに健康面が気になる方は「自然素材の家」の方が無難だと思います。
「キレイな家=傷や汚れの無いピカピカな家」だとおもうなら 「従来の家」
せっかく新築の家を建てるなら、傷1つなくピカピカな状態をなるべく長く維持したいですよね。
その気持ちはすごくわかりますが、そういう方は自然素材の家には向いていません。
自然素材はすぐに傷がつきますし、汚れが残ります。
特に無垢の木材がそうです。
正直、現場監督の経験上、家を建てている時もちゃんと保護していても傷がつきます。
工事中に目立つ傷がついてしまったときはお家のお引き渡しの前に削ってごまかしたりします。
生活し始めたらすぐに傷がつきます。
物を落としたり、椅子や家具を引きずったり、ツメで引っかいても傷がつきます。
1年間生活しただけでも結構、生活感が出ます。
それが嫌な方は「従来の家」でないと後悔すると思います。
ただし、自然素材の家はただ汚くなっていくわけではありません。
従来の家は年数が経つにつれてボロボロになる「経年劣化」していくのに対して、自然素材の家は「経年美化」していくと言われています。
従来の家で使われている工業製品は年数が経つと、材料の表面のプリントが剥がれたり、塗装がハゲて劣化していきます。
時が経つにつれて「これって木じゃなかったんだ。」ってどんどんボロが出てきて、なんかショックなんですよね。
「高いお金を払って建ててるのにニセモノの木を使ってたのか。」って後になってわかってしまい、さらに落ち込みます。
それに対して、自然素材の住宅の場合、最初こそ傷や汚れが少ないので、住み始めて傷や汚れがつくと目立ってしまいます。
しかし、しばらく生活しているうちに徐々に馴染んでいき、それが「味わい」へと変化していくのです。
住めば住むほど味が出て美しくなっていくのが自然素材の住宅です。
例えば、職人さんの使い込まれた道具を見て、「黒ずんでて汚ねぇな」と思う人は少ないですよね。
使用感があっても、傷や汚れがあっても、手入れされて丁寧に使われていると、それは美しく味があります。
京都の神社やお寺を見ても同じです。
汚れや傷が無数にあっても手入れされて丁寧に使われていると、それに応えるように美しくなります。
これが「経年美化」です。
では、工業製品で建てられている従来の家でもきちんと手入れして、丁寧に使えば経年美化になるのでしょうか。
それは「NO!」です。
接着剤や塗装で作られた材料はどれだけ磨いても、時間が経つと接着剤や塗装は剥がれるときが来ます。
接着剤の効果は時間が経つと弱くなっていきますので、丁寧に使っても遅かれ早かれ剥がれます。
自然素材には「ピカピカで傷や汚れ一つない」なんて状態は無理ですが、味が出て美しくなっていくのを楽しめます。
「『味』って(笑) ただ薄汚いだけじゃん」「傷とか汚れがないからキレイなんだよ」って方は自然素材の家には向いていません。
とにかく安く家を手に入れたいなら 「従来の家」
先ほど、「初期費用が高くても維持費を考慮すると自然素材の住宅もそれほど高くない」とお話しましたが、家の購入費をとにかく抑えたいのであれば「従来の家」になります。
安さはやっぱり工業製品の方が安いです。
材料費だけで比べても工業製品の方が安いですし、工賃をくらべても工業製品の方が安いです。
工業製品は工事が楽にできるような工夫がしてあるので工事期間が短く、手間も少なく使用できるので工賃が安くなります。
それと比べて、自然素材はその材料の1つ1つの個体差やクセを把握して、それに合わせた使い方をしないと不具合が出てしまいます。
そのため、どうしても工期が長くなり手間も増えてしまうので、工賃も高くなります。
家に対して心地よさやリラックスを求めるなら 「自然素材の家」
リラックスできる空間や落ち着ける空間を求めるなら「自然素材の家」がピッタリです。
わざわざ言う必要もありませんが、工業製品に囲まれているより、自然のものに囲まれている方がリラックスできます。
色みや模様、匂い、手触り、ぬくもり
工業製品では絶対に表現できません。
もし、あなたが自然素材の家を写真でしか見たことないのであれば、ぜひ体感してみてください。
今までのデメリットが帳消しになるくらい「いいっ!」って感じるかもしれません。
自然素材の家を建てる時、ここに気をつけて!!
実際に自然素材の家の現場監督をしていた経験から、自然素材の家を建てる際に、本当に気をつけてほしいことをお伝えします!
これを知らないと「せっかく高いお金を払ったのに、工業製品を使った従来の家とほとんど変わらなかった。」なんてことになるかもしれません。
しっかりと読んで、本当に気をつけてください。
「自然素材」の認識は人それぞれ
今まで自然素材の話をしてきましたが、実は自然素材に正式な定義はありません。
「自然に近い状態の材料」みたいな曖昧な意味はありますが、きちんとした決まりはありません。
なので、「自然素材の家」といっても建てる会社によって全く違うものになります。
例えば、無垢の木材の場合、私が現場監督をしていた会社では接着剤を使用せず、塗装もしていないものを「無垢材」と言っていました。
しかし、接着剤を使用していても塗装をしていなければ「無垢材」と言う会社もあります。
塗装をしているけど接着剤を使っていなければ「無垢材」と言う会社もあります。
実際に「無垢材」と画像検索してみるとよくわかります。
ニスやワックスでテッカテカになっている木材でも「無垢材」と言われていますし、「いやいや、無垢材なわけないじゃん」ってくらい大きな板が安く売っています。(20センチほどの幅の板を数枚接着して大きな板に成型しています)
お客さんと住宅会社の「自然素材」という認識がズレていたら、「無垢材って言ったのになんだこれ!」と トラブル になる可能性は高いです。
実は、実際に私がやらかした失敗があるので紹介します。
私が思っている「無垢材」は当然、接着剤も使わず塗装もしていない材料のことでした。
私は自分で自宅の和室を無垢のフローリングにリフォームしました。
なるべく費用を抑えるためにネット通販で「無垢」と書いてあるフローリングを購入したのですが、実際に届いたフローリングは接着剤を使用しているものだったのです。
さすがに塗装はしてありませんでしたが、「うわぁ、一般的な『無垢』ってこれのことかぁ」って落胆してしまいました。
すでに受け取ってしまったし、返品するわけにもいかないので仕方なく使っています。
ちなみに↑これは合板(数枚の板を接着してつくられたもの)の表面にキレイな無塗装の板を貼り付けたフローリングです。
このフローリングも「無垢フローリング」として売られていました。
「これはさすがに『無垢』じゃないだろ!」って思います。
無垢材以外にも漆喰や珪藻土でも自然の材料だけで練り上げているものもあれば、添加物として防腐剤や防カビ剤などが入っていても「自然素材」と言っているものもあります。
住宅会社によっては、家の中から目に見えるところだけ自然素材だけど、見えないところでは工業製品を使っているという家でも「自然素材の家」と言っていることもあります。
壁だけ、もしくは床だけ自然素材を使って他は工業製品で建てられた家でも「自然素材の家」と言うところもあります。
「全てが自然素材だから自然素材の家なんだろ」と思う私からしたら詐欺のような話ですが、「自然素材」に詳しい定義がないので、だれも嘘はついていないのです。
「自然素材=安全」ではない
「自然素材」と聞くと多くの人が「健康的」とか「安全そう」という印象があるかと思います。
確かに、多くの人にとって「自然素材」は健康的だし、心が安らぐものです。
ただし、すべての人にとってそうとは限りません。
現場監督の頃に実際にお会いした方に、スギやヒノキの木のアレルギーの方がいらっしゃいました。
「花粉」ではなく「木」のアレルギーでした。
また、匂いな敏感な方だと、無垢材の木の強い匂いが耐えられない方や漆喰が完全に乾くまでの独特な匂いが耐えられないという方もいらっしゃいました。
どれだけ「自然の材料だから健康的だ」と頭では思っていっても、身体が受け付けないこともあるのです。
特に従来の住宅から自然素材の家に変わるときには変化が大きいので身体が拒否することもあります。
なので、必ず自然素材の家を見学会やモデルハウスで実際に体験してください。
もしそこで頭痛や喉の痛み、鼻づまり、疲れ方が普段と違うなどの症状が出たら、注意してください。
まとめ
「自然素材の住宅」と一言にいってもその内容は住宅会社によって様々です。
今回は一般的に言われている「自然素材」についてお話ししましたが、その材料の良さを引き出す作り方をしているものもあれば、「自然素材」というのは名ばかりで「これなら工業製品のほうがマシ」というようなものもあります。
もし、この記事を読んで自然素材の住宅を建てるのであれば、前者の「良さを引き出すような材料」を使っている住宅会社を選んでください。
そのような住宅会社を見分け方のポイントは、「その材料へのこだわりがあるか」です。
たとえば、漆喰を使った家を建てるなら、漆喰そのものの良さだけを語る会社ではなく、その会社が使っている漆喰の良さやこだわりを語ってくれる会社を選んだ方がいいです。(色々なメーカーが漆喰を作っています。数ある漆喰の中でなぜこの漆喰を採用しているのかを話してくれる会社がいいです)
きちんとこだわりがある会社はダメな材料と良い材料があることをよくわかっています。
前者のような素材そのものの良さしか話せない会社は「自然素材を使っている」というレッテルがほしいから自然素材を使っているだけの会社です。
残念ながらこのような会社は非常に多いです。
せっかく自然素材の家を建てるなら、その良さを存分に味わえるお家を建ててくれる会社を選んでくださいね!